2016年5月23日

とおるくんのこと

小学校の同級生だったとおるくんは、勉強ができた。
授業中も手を挙げていた。ピンっとお日さまに引っ張られるように。
宿題も毎日ちゃんとやってきていた。

マラソン大会の練習のあと、荒い息遣いのまま私はとおるくんに訊いてみた。

「勉強すき?」
「うん」

間髪いれずにうなずいたとおるくんの瞳は、うらやましいくらいに透き通っていた。

私は信じられなかった。衝撃だった。

だって、勉強って、めんどくさくて意味がわからなくて辛いものでしょ?
みんなにとって、勉強は嫌いなものだと思っていたのに。
とおるくん、ちょっとおかしいなとその時は思っていた。


でも今になって、とおるくんの気持ちがわかるようになった。
新しいことを知ると、おもしろい。
新しいことを知ると、目の前がぱあっと明るくなる。
どうしてこうなるの?どうやったらそうなるの?次々知りたくなる。

きっととおるくんは、私が勉強を好きになるずうっと前から、知ることが楽しいとわかっていたんだね。

このわくわくをみんなにも味わってほしい。
いろいろな世界に会える場所があったらいいな。
わくわくぞくぞくする、夜も眠れないような。


ふと思い出した、とおるくんの話。