2017年3月24日

印象に残る先生「ひげの先生」

小学校の5、6年の時の担任の先生は、男の先生だった。

ひげを生やしていて、30代くらいだったと思う。
11歳の私がこれまで出会ったなかでは、一番先生らしくない先生だと思っていた。

男子と同じ次元でふざけていたし、しいたけは嫌いだからと給食を残していた。男子たちは先生の子分みたいにいじられていた。

でも子供たちの間で何かがあると、真剣に怒ったり、一緒に考えたり、泣いたりしてくれる熱い先生でもあった。

話は変わって当時の私のイメージは、仲良しではない友達にとっては大人しくて真面目な子という感じだったと思う。
というのには理由があって、3、4年の時の担任の先生がとても厳しいおばちゃん先生で、私はその先生の噂を聞き、とてもおそれていた。ところが、私は3年生になったその日にお弁当を忘れ、おばちゃん先生のお弁当を食べさせてもらうという、初っぱなからとても目立ったことをしてしまったため、それ以降なるべく目立たないように、怒られないようにと過ごしていたのだ。

だから、みんなからリーダー的な役割を推薦され、班長などをよくやっていた。

でも、ひげのその先生は、修学旅行の班長を、いつも同じ人はつまらないからと、私に決まったあとに他の人を班長にした。そんなこと言われたことがなかったので驚いたが、そのおかげで私は、衛生係になったと記憶している。

卒業間近になり、クラスの文集を作る話があった。そのタイトルをクラスで話し合っていたときだ。「未来へ」とか「思い出」とか、当たり障りのないタイトルの候補が黒板書かれていった。
そして、多数決によってその当たり障りのない候補から、もっとも当たり障りのないタイトルに決まった時に、ひげの先生が時間を止めた。

それじゃあつまらないから、タイトルは「あっ」にしよう!

今まで話し合った時間は何だったのかと少しだけ思ったが、そんなタイトルの文集見たことないぞ、とわくわくもしていた。

とうとう、文集は「あっ」に決まり、出来上がった冊子を見たら、「あっ!」とビックリマークもついていた。太くて立派な筆文字だった。

卒業式には、トレードマークだったひげを剃ってやってきた。そして泣いていた。

みんなと同じじゃ、いつも同じじゃおもしろくないと、身をもって教えてくれた先生だった。