2018年7月20日

よしたかくんのこと

小学校の同級生のよしたかくんは、笑うと目がなくなる
いつもニコニコしていた
だからいつも目がなかった

よしたかくんの目からは優しさがにじみ出ていた

あれは、確か何かの授業中
松山千春の「良生ちゃんとポプラ並木」を先生がCDで流した

春は細道ポプラ並木を 良生ちゃんと学校帰り
良生ちゃんは足が長く 僕はいつでも小走りだ
春のやさしい日差しを浴びて
ポプラ並木は 背伸び 背伸び

夏は陽炎ポプラ並木で みんな集まりチャンバラごっこ
良生ちゃんは正義の味方 僕は悪役切られ役
夏の日差しにかげろう揺れて
ポプラ並木は 背伸び 背伸び

秋は夕暮れポプラ並木の 長い影はアベック・コース
良生ちゃんは女連れで 僕は一人でいじけるばかり
秋は木枯らし凍えるように
ポプラ並木は 背伸び 背伸び

冬は初雪ポプラ並木を しばれた身体丸めるように
良生ちゃんはスケート選手 僕は補欠のまた補欠
冬は一面銀世界
ポプラ並木は 背伸び 背伸び

あれからすでに十年過ぎて 良生ちゃんは結婚をして
風の便りに聴いた話じゃ 男の子が生まれたそうだ
いつも僕らを見守るように
ポプラ並木は 背伸び 背伸び
いつも僕らを見守るように
ポプラ並木は 背伸び 背伸び

クラスのお調子者が「よしたかちゃんだって」とよしたかくんのほうを向いて笑った
みんなもそれにあわせてアハハと笑い、教室が賑やかになった

よしたかくんは、最初にこにこしていた

よしたかくんも笑ってる
自分と同じ名前、しかもよしたかちゃんって呼ばれてる
そりゃおかしいよな
とみんなと同じく私も笑っていた

ところが、次によしたかくんのほうを向くと、よしたかくんはシクシクと泣いていた

我慢していた涙がこぼれていた

注目されるのが恥ずかしかったのか、からかわれるのが嫌だったのか

私も笑ってしまったことを心の中で後悔しながら、よしたかくんの優しさを再確認していた

最初にこにこしていたのは、みんなにあわせてくれていたんだ
やっぱりよしたかくんは優しい

この歌をきくと、よしたかくんを思い出す